神とアブラハムの契約
あなたの子孫は星の数のように多くなるであろう
神とアブラハムの契約・祝福一覧
神はアブラハムをこよなく愛し、聖書の中でも10度以上にわたり、アブラハムに祝福し、契約を結んでいることが記録されています。
場所など | 主な内容 | |
---|---|---|
1回目 | カナンに向かうとき (ハラン、アブラハム75歳) | ①カナンへ向かえとの命令 ②大いなる国民の祖父とする 創12/1-3 |
2回目 | カナン到着時 (シケムの聖所、モレの樫の木) | 子孫にカナンの地を与えること 創12/7 |
3回目 | エジプトからカナンへ帰還し、ロトと別れた後 (シケムの聖所、モレの樫の木) | ①アブラハムと子孫にカナンの地を与えること ②子孫が繁栄すること 創13/14-17 |
4回目 | エラム王の捕虜となったロトを救出し、財産を取り返した後 (紀元前2000年頃) | ①子を授けること ②子孫が繁栄すること 創15/1-5 |
5回目 | 捧げものをした後 | ①子孫に土地を与えること 創15/18-20 |
6回目 | アブラハムが九十九歳のとき | ①完全であれ ②子孫繁栄 ③多くの国民を祖父 ④アブラムからアブラハムへ改名 ⑤アブラハムと子孫にカナンを永遠の所有地として与えること ⑥割礼を行うこと 創17/1-14 |
7回目 | アブラハムが九十九歳のとき | ⑦サライからサラの改名 ⑧男児(イサク)誕生の約束(1回目) ⑨イシュマエルの子孫繁栄 ⑩イサクと契約を立てること 創17/15-22 |
8回目 | 三人の男(旅人)が現れたとき | 男児(イサク)誕生の約束(2回め) 創18/10 |
9回目 | イサク献祭の後 | 子孫繁栄 創22/16-18 |
10回目~ | アブラハムが年老いたとき | すべてにおいて祝福 創24/1 |
1度目(ハランからカナンへ向かう命令)
アブラハム(アブラム)は75歳のとき、神の命令を受け、ハランを出発し、カナンに向かいました。神ヤハウェはアブラハムを祝福し、広大なカナンの地を与えること、子孫を大いに増やすことを約束します。
時に主はアブラムに言われた、「あなたは国を出て、親族に別れ、父の家を離れ、わたしが示す地に行きなさい。
わたしはあなたを大いなる国民とし、あなたを祝福し、あなたの名を大きくしよう。あなたは祝福の基となるであろう。
あなたを祝福する者をわたしは祝福し、あなたをのろう者をわたしはのろう。地のすべてのやからは、あなたによって祝福される」。
アブラムは、主の言葉に従って旅立った。ロトも共に行った。アブラムは、ハランを出発したとき七十五歳であった。
©日本聖書協会/旧約聖書 口語訳
創世記 第12章 1節~4節
2度目(カナン到着時)
アブラムはその地を通り、シケムの聖所、モレの樫の木まで来た。当時、その地方にはカナン人が住んでいた。
主はアブラムに現れて、言われた。「あなたの子孫にこの土地を与える。」アブラムは、彼に現れた主のために、そこに祭壇を築いた。
©日本聖書協会/旧約聖書 口語訳
「創世記」第12章6節~7節
3度目(エジプトからカナンへ帰還し、ロトと別れた後)
主は、ロトが別れて行った後、アブラムに言われた。「さあ、目を上げて、あなたがいる場所から東西南北を見渡しなさい。
見えるかぎりの土地をすべて、わたしは永久にあなたとあなたの子孫に与える。
あなたの子孫を大地の砂粒のようにする。大地の砂粒が数えきれないように、あなたの子孫も数えきれないであろう。
さあ、この土地を縦横に歩き回るがよい。わたしはそれをあなたに与えるから。」
©日本聖書協会/旧約聖書 口語訳
「創世記」第13章14節~17節
4度目(エラム王の捕虜となったロトを救出し、財産を取り返した後)
アブラハムは、神から子孫繁栄の啓示を何度も受けますが、99歳になっても、子を授かることはありませんでした。アブラムが諦めかけていたある日、神が顕れて「アブラムよ、心配することはない。わたしがおまえを守り、大いに祝福してやろう。」とアブラムに告げます。するとアブラムは「神よ、私に何をくださろうというのです。私に息子がないのはご存じでしょう。それでは、どんなに祝福していただいても、何の役にも立ちません。息子がいないので、下僕の息子が私を継ぐことになります。」と応えます。すると神はアブラムを外に連れ出して言われました。「天を見上げて、星を数えることができるなら、数えてみなさい。あなたの子孫はこのように(多く)なる。」すると、アブラハムは神ヤハウェを信じました。
これらのことの後、主の言葉が幻の中でアブラムに臨んだ。「恐れるな、アブラムよ。私はあなたの盾である。あなたの受ける報いは非常に大きい。」
アブラムは言った。「主なる神よ。私に何をくださるというのですか。私には子どもがいませんのに。家の跡継ぎはダマスコのエリエゼルです。」
アブラムは続けて言った。「あなたは私に子孫を与えてくださいませんでした。ですから家の僕が跡を継ぐのです。」
すると、主の言葉が彼に臨んだ。「その者があなたの跡を継ぐのではなく、あなた自身から生まれる者が跡を継ぐ。」
主はアブラムを外に連れ出して言われた。「天を見上げて、星を数えることができるなら、数えてみなさい。」そして言われた。「あなたの子孫はこのようになる。」
©日本聖書協会/旧約聖書 口語訳
「創世記」第15章1節~5節
5度目(捧げものをした後)
アブラハムが牛と羊と鳩を神様に捧げ、鳩を裂かずに失敗した後にカナンの地を与えることを約束しました。
日が沈み、暗くなった頃、煙を吐く炉と燃える松明がこれらの裂かれた動物の間を通り過ぎた。
こうしてその日、主はアブラムと契約を結んで言われた。「あなたの子孫にこの地を与える。エジプトの川からあの大河ユーフラテスに至るまでの、
カイン人、ケナズ人、カドモニ人、
ヘト人、ペリジ人、レファイム人、
アモリ人、カナン人、ギルガシ人、エブス人の地を与える。」
©日本聖書協会/旧約聖書 口語訳
「創世記」第15章17~21節
6度目(アブラハムが九十九歳のとき)
アブラムが九十九歳の時、主はアブラムに現れて言われた。「私は全能の神である。私の前に歩み、全き者でありなさい。そうすれば、私はあなたと契約を結び、あなたを大いに増やす。」
アブラムがひれ伏すと、神は語りかけた。「これがあなたと結ぶ私の契約である。あなたは多くの国民の父となる。あなたの名はもはやアブラムとは呼ばれず、アブラハムがあなたの名となる。あなたを多くの国民の父とするからである。私はあなたを多くの子孫に恵まれる者とし、諸国民を興す者とする。こうして王となる者たちがあなたから出るであろう。私はあなたと、あなたに続く子孫との間に契約を立て、それを代々にわたる永遠の契約とする。私が、あなたとあなたに続く子孫の神となるためである。私はあなたが身を寄せている地、カナンの全土を、あなたとあなたに続く子孫にとこしえの所有地として与える。こうして私は彼らの神となる。」
神はアブラハムに言われた。「あなたと、あなたに続く子孫は、代々にわたって私の契約を守らなければならない。私とあなたがた、およびあなたに続く子孫との間で守るべき契約はこれである。すなわち、あなたがたのうちの男子は皆、割礼を受けなければならない。包皮に割礼を施しなさい。これが私とあなたがたとの間の契約のしるしとなる。あなたがたのうちの男子は皆、代々にわたって、生後八日目に割礼を受ける。家で生まれた者、また、あなたの子孫ではないが、外国人から銀で買い取ったすべての者がそうである。あなたの家で生まれた者、またあなたが銀で買い取った者は必ず割礼を受けなければならない。私の契約は、あなたがたの体に記された永遠の契約となる。包皮に割礼を施さない無割礼の男子、その者は民の中から絶たれる。その者は私の契約を破ったからである。」
©日本聖書協会/旧約聖書 口語訳
「創世記」第17章1~14節
7度目(アブラハムが九十九歳のとき)
神はまたアブラハムに言われた。「あなたは妻のサライを、サライという名で呼ばず、サラと呼びなさい。
私は彼女を祝福し、彼女によって、あなたに男の子を与える。私は彼女を祝福し、彼女は諸国民の母となる。こうして彼女からもろもろの民の王たちが生まれる。」
アブラハムはひれ伏して笑い、心の中で言った。「百歳の男に子どもが生まれるだろうか。九十歳のサラが子どもを産めるだろうか。」
アブラハムは神に言った。「どうかイシュマエルがあなたの前に生き長らえますように。」
すると神は言われた。「いや、あなたの妻であるサラがあなたに男の子を産む。その子をイサクと名付けなさい。私は彼と契約を立て、それをその後に続く子孫のために永遠の契約とする。
イシュマエルについてのあなたの願いは聞き入れた。私は彼を祝福し、子孫に恵まれる者とし、その子孫を大いに増やす。彼は十二人の族長をもうけ、私は彼を大いなる国民とする。
しかし私が契約を立てるのは、来年のこの時期に、サラがあなたに産むイサクとである。」
こう語り終えると、神はアブラハムを離れて昇って行かれた。
©日本聖書協会/旧約聖書 口語訳
「創世記」第17章15~22節
8度目(三人の男(旅人)をもてなしたとき)
彼らの一人が言った。「私は必ず来年の今頃、あなたのところに戻って来ます。その時、あなたの妻のサラには男の子が生まれているでしょう。」サラは、その人の後ろにある天幕の入り口で聞いていた。
©日本聖書協会/旧約聖書 口語訳
「創世記」第18章10節
9度目(イサク献祭の後)
主の使いは、再び天からアブラハムに呼びかけて、
言った。
「自らにかけて誓われる主のお告げである。あなたがこうして、自分の息子、自分の独り子を惜しまなかったので、
私はあなたを大いに祝福し、あなたの子孫を空の星のように、海辺の砂のように大いに増やす。あなたの子孫は敵の門を勝ち取るであろう。
地上のすべての国民はあなたの子孫によって祝福を受けるようになる。あなたが私の声に聞き従ったからである。」
©日本聖書協会/旧約聖書 口語訳
「創世記」第22章15~18節
10度目以降(アブラハムが年老いたとき)
アブラハムは多くの日を重ねて年を取ったが、主はすべてのことにおいてアブラハムを祝福された。
©日本聖書協会/旧約聖書 口語訳
「創世記」第24章1節
パレスチナ問題
神とアブラハムの契約のとおりに、アブラハムの子孫は繁栄し、紀元前1095年には、国ができるまでになりました。ヘブライ王国の頃に全盛をきわめましたが、ソロモン王(※1)の死後、内紛が起こりイスラエル王国(北イスラエル)とユダ王国(南ユダ)に分裂してしまいました(紀元前975年)。
分裂後、イスラエル王国はメソポタミアのアッシリアに滅ぼされ(紀元前722年)、ユダ王国もメソポタミアのバビロニアに滅ぼされます(バビロン捕囚/紀元前588年)。
その後も国家を再建しますが、ローマ軍によって完全に都市を破壊され(紀元後70年頃)、ユダヤ人は追放され世界中に散っていきました(※)。
※これを「ディアスポラ(離散)」といいます。
そして、ユダヤ人は、1900年近くに及ぶ流浪と迫害の末、1948年5月14日、パレスチナ(カナン)に地に、悲願のユダヤ人国家「イスラエル」ができました。しかし、そのことが理由で、現在も解決していない「パレスチナ問題」が生じてしまいました。
パレスチナ問題は、端的に言えば「アラブ人とユダヤ人との間の領土問題」ですが、現実には世界各国を巻き込んでいる国際紛争です。ユダヤ人にとっては、パレスチナ(カナン)は「神との契約の地」。パレスチナ問題の根底には「神とアブラハムとの契約」があると言われています。
〔参考・出典〕
日本聖書協会「旧約聖書(新共同訳/口語訳)」/新日本聖書刊行会「新改訳聖書第三版」/岩波書店「旧約聖書I 創世記」/wikipedia「アブラハム」/Biblica